2019年4月1日 8:00 AM
日本人にとって海外旅行といえば、真っ先に挙がるのがハワイだ。しかし、パッケージツアーとFITのバランスが変化したことで、旅行業界は新たな対応を迫られている。全日空のA380型就航で注目を集めるなか、どんな変化が起きようとしているのか。
航空会社にとっても旅行会社にとってもハワイは最大級の収益源で、国際線事業あるいは海外旅行事業の成功に欠かせない重要なピースだ。そのハワイに超大型機A380型を投入し、新たなチャレンジを始めようというのが全日空(NH)だ。
NHは5月24日から成田/ホノルル線に1機目のA380型を投入し週3便運航する。さらに7月1日には2機目を投入して週10便に増やし、最終的には20年をめどに3機目を投入する計画だ。座席数はエコノミー383席、プレミアムエコノミー73席、ビジネスクラス56席、ファーストクラス8席の計520席。1機当たりの供給座席数はそれまでの約2倍となる。特にプレミアムエコノミーが約5倍に増席されることと、ホノルル線では例の少ないファーストクラスを常設している点が注目される。
昨年から宣伝し、話題を盛り上げてきた成果もあり、今年4~9月のNHホノルル線の予約状況は前年同期比50%強の増加と好調だ。供給量の増加は50%弱で、予約が上回って推移している。折しも、エアバスがA380型機の製造を21年納入分で中止する方針を打ち出したが、NHはメンテナンスは持続するため運航に支障はないとし、予約状況にも特段の影響は見られないという。旅行会社の反応も、「久しぶりに良いトピックス。日系ブランドの人気は根強く、パンフレットのはけがいい」(エイチ・アイ・エス〔HIS〕関東海外旅行事業部ハワイ旅行事業グループ・岡部桐子グループリーダー)と上々で、滑り出しは好調といった様相だ。
ただし、供給量がさらに増える夏以降も同じペースで座席が埋まるかは未知数だ。東京発の市場価格の低下が起きる可能性もある。
実際、A380型の就航に合わせ、NHは公示運賃のボトムを3月末までの7万5000円から、4月以降は5万5000円に引き下げる。現行のB787-9型のエコノミークラス200席に対し、A380型では383席と約2倍に増えるだけにボトムを引き下げて取り込める需要の幅を広げる戦略だ。ただし、「引き下げても最安キャリアにはならず、価格競争の悪循環に陥るとは考えていないし、そうするつもりもない」(マーケティング室レベニューマネジメント部国際チーム・嵐竜介マネージャー)と過度な価格競争とは一線を画す姿勢を強調する。
一方、ビジネスクラスは運賃を変えず、プレミアムエコノミーはエコノミーとビジネスの動向を見つつバランスを取る。A380型ではカウチシートなど新しいアイデアが光るが、関係者を驚かせたのがファーストクラス運賃だ。往復で35万円からと破格の低さに設定した。ビジネスクラスと併せて富裕層の取り込みを図る狙いで、「ビジネスクラスの運賃にもう少し足してファーストクラスに乗れるならそうしたいと考える富裕層は確実に存在する」(嵐マネージャー)と見る。運賃政策と併せて、医師の会員組織などコミュニティーへのアプローチ等を検討している。
A380型のエコノミークラスは、マイレージ特典を償還する受け皿の役割も担う。ホノルル線は要望が最も多い路線でありながら供給が不足気味で、利用客から「特典航空券で席を取りづらい」との声も上がっていた。そこで充当座席数を1便当たりエコノミークラスで3~4倍、全体で2倍程度拡大し、特典償還率を上げて満足度向上を図る。「他路線の出張旅行でマイルを貯めるようなビジネス客の満足度を高めれば、国際線全体で収益の拡大と利用拡大につなげられる」(嵐マネージャー)
【続きは週刊トラベルジャーナル19年4月1日号で】[1]
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