Travel Journal Online

人間生活を豊かにする究極のみちくさ

2019年4月1日 8:00 AM

 外出先や出張先でのちょっとしたスケジュールの合間に、不意に訪問した場所で新しい発見をしたり、眺めのいい場所で休息をとってリフレッシュしたりすると、幸せな気持ちになる。

 「道草を食う」という慣用句があるが、馬が道端の草を食べて進行が遅くなることに由来して、「本来やるべきことと異なることに時間を費やす」という意味で使われている。ネガティブなケースで使うことが多い言葉だが、道草大好き人間としては、かなりポジティブなイメージを持っている。

 ところが、最近この言葉を使う機会が減っているけど、なぜだろうか。道端に草が生えていないのではなく、草を食いに行く余裕がないのだと思う。

 会社のクラウド環境の関係で、スケジュールをGoogle カレンダーで管理している。これがまた厄介で、15分単位で細かく時間設定されてしまうし、スケジュールが公開されているので、次々と予定を入れられてしまう。ご丁寧に移動時間も確保してくるが、これまた所要時間きっちりで入ってくる。

 この所要時間は経路検索アプリで調べるのだが、早い・乗り換えが少ない・安いという視点から最適なルートを出してくる。最近ではリアルタイムの運航状況や混雑状況まで加味されるなど、AI がどんどん進化している。

 「AI との共生」的なテーマでよく議論されているが、技術的なリテラシーがない文系の感覚でいうと、AI は最も効率的・合理的・経済的な解を出してくるイメージがある。一方で人間は必ずしも最適解どおりに行動することが幸せとは限らない。むしろ、一見ムダだと判断されがちなことや、ばかげていると思われがちなことに、至福の時を感じることが多いのだ。

 自分自身も、目的地を決めずにカーナビも切ってドライブしたり、ひと駅手前で下車して歩いてみたり、遠回りして公園で昼寝をしたりと、非合理で衝動的な行動をよくとっていた。ところが近頃は、そのように街の様子を五感で感じるような行動が減っているので、もっと移動時間に余裕を持ったスケジュール設定を心がけたい。

 そして移動する際の経路検索だが、出発時間か到着時間のどちらか一方を入れると、最適ルートを出すのがこれまでの仕組みである。これからは、余裕を持って両方の時間を入力すると、その時の自分の状態にあった「みちくさプラン」を出してくるとうれしい。時にはワクワクする、あるいは癒やされる、はたまた勉強になるような「みちくさ」をリコメンドしてくる、気の利いたAI であれば寄り添っていけそうなので、誰か一緒に作って欲しい。

 若い頃に福岡でお世話になった西鉄旅行が主催する国内旅行ブランド名が「みちくさ」であることを思い出した。当時は気付かなかったが、今思うと味のあるとてもいいネーミングである。

 「人間生活を豊かにする究極のみちくさが旅行である」とはいえないだろうか。時間に追われる現代社会において、あえて道草を食うことで、人生に彩りが添えられると素敵である。

津田佳明●ANAホールディングスデジタル・デザイン・ラボ チーフ・ディレクター。1992年に東京大学を卒業後、ANA入社。旅行代理店セールス、販促プロモーション、運賃、路線計画など営業・マーケティング関連業務を担当。2013年よりANAホールディングスへ出向し経営企画課長。16年より現職。19年よりアバター準備室長を兼務。