宿泊予約サイト問題の検証、海外勢に強まる監視

2019.03.11 08:00

シートリップの日本戦略への影響は不可避 (C)iStock.com/selimaksan

 宿泊予約サイトが客室流通の主役の座を占める一方で、世間を騒がせる問題が相次いでいる。日本では昨年末、Trip.com(トリップドットコム)の空販売が浮上し、海外では大手OTAが規制当局の警告を受ける事態に。利用者の増大でより高い透明性が求められる宿泊予約サイトの問題を検証する。

 日本市場で騒ぎとなったのは、航空券やホテル、列車などの予約を取り扱うTrip.comだ。昨年12月上旬、空販売問題が浮上した。同サイトは中国最大手OTA(オンライン旅行会社)のシートリップがグローバル市場で運営する多言語サイトで、17年から日本語でサービスを開始した。シートリップといえば、目下、破竹の勢いで業績を伸ばしており、グローバル市場での存在感も増しつつある。日本市場も例外ではなく、売上高50~100%増という強気の成長目標を掲げ、攻勢をかけ始めている。問題が明るみになったのは、その矢先の出来事だった。

 発端は、Trip.comを通じて利用者に確約されたはずの年末年始の宿泊に関して、宿泊施設側で予約が確認できない状況が発生したことだった。施設側から見れば、すでに満室状態の旅館やホテルの部屋が知らないうちに空室としてサイトに掲載され、予約受け付けが行われていたことになる。繁忙期にプラチナ化する高級旅館や人気施設の部屋を餌にした、いわゆる空販売が行われていたわけだ。しかも、事前決済で返金不可を条件としており、高額の取消料を条件とする記載なども見られたことから、一部メディアからは取消料詐欺の疑いさえ指摘される事態となった。

トラブル要因はリクエスト予約

 問題が報じられると、シートリップ側はTrip.comジャパン名で「一部メディアでの報道について」とのコメントを12月6日付で発表。サイト上で空販売が行われていた事実を認めて謝罪するとともに、背景について説明した。それによると、予約方法の1つである「リクエスト予約」の不適切な運用が原因になっていたという。リクエスト予約は、利用者が希望する宿泊施設にデポジットを支払ったうえで予約申し込みを行い、その後、空室の確認が取れた場合に予約が確定する。どうしても特定の宿泊施設や客室に宿泊したい利用者にとって便利な予約方法で、シートリップは海外では比較的よく行われていると説明する。

 複雑なのは、Trip.comでは宿泊施設と直接契約し宿泊プランを仕入れている以外に、第三者の販売業者が扱う宿泊プランも販売する「プラットフォームモデル」を採用していることだ。今回、一部の販売業者がリクエスト予約を悪用し、宿泊施設との間で販売契約がないにもかかわらず予約を受け付けた。そのうえで、予約が確定していない部屋に関しても、Trip.comに対しては宿泊施設の予約が確定できている旨の連絡を行い、この情報を基にTrip.comは利用者に予約確定のメールを送っていたことが同社の調査で判明した。

 また、高額なキャンセル手数料狙いの行為ではないかとの指摘に対して、Trip.comではプラットフォームモデルで運営していることを前提に、「販売業者から提供されている宿泊プランのキャンセルポリシーを掲載している」にすぎないとしたうえで、「今後はキャンセルポリシーの機能を細かく設定できるよう充実させ、販売業者により正確なキャンセルポリシーを提供するように求めていく」との方針を表明した。

 このほか、宿泊施設のプランや部屋タイプに関して、当初から存在しない内容が掲載されていたことが確認されているが、「販売業者からの情報(宿泊施設の画像、宿泊可能人数、部屋のタイプ、食事コース、宿泊料、キャンセルポリシー等)をそのまま掲載している」として販売業者側の責任を強調した。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年3月11日号で】

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