『京都、パリ この美しくもイケズな街』 表と裏をうんちくでたっぷりと

2019.03.04 18:33

井上章一・鹿島茂著/プレジデント社刊/1200円+税

 京都とパリ。姉妹都市でもあるこの2つの街の共通イメージといえば、
・川沿いに発展した古都
・ファッション、食の都
・文化の中心的都市
・なんとなく威張っている
・なんとなくよそものに冷たい

 ……すいません、最後2つは単なるワルグチです。はい……。

 ともあれ、なんとなーく似たような感じがするこの2つの街の表裏を語り合うのは、ベストセラー『京都ぎらい』の著者・井上章一氏とフランス文学者の鹿島茂氏だ。

 「祇園祭が行われるところが京都」とよくいうが、西陣辺りの町衆は京都御所を中心としたエリアを京都だと考えている。それは武家と公家が入り乱れた歴史の中で育まれた意識だそう。一方、パリは城塞都市としての成り立ちから侵略されるごとに人が動き、人口増加や社会の変遷に伴って、民衆、王侯貴族の居場所、あるいは墓地などが入れ替わり、いまの姿が形成された。また、子孫が家を引き継いでいくのが大事とされる京都に比べ、パリは歴史的に金融ブルジョワの街。代々パリに住むよりも、どこかに「城」を持っているのが自慢になるのだという。

 へええ。

 文化、芸術、歴史など話題は幅広く、お二人のうんちくは「へええ」なことがいっぱい。ただしこのお二人、『ぼくたち、Hを勉強しています』という対談集を出しているだけあり、京女やパリジェンヌ、花街の話になるとがぜん熱が入る。おじさん向けの話題が延々と続き、女性としては正直(いまどきそういう……?)、ちょっと鼻白む部分もある。

 とはいえ、識者の話というのはやっぱり聞き入ってしまう。2都市の比較論として、へええ、と読める一冊だ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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