2019年2月18日 6:52 PM
こんな仕事をしているが、飛行機が苦手だ。何度か怖い思いをしたのもあるが、密閉空間での長距離移動がつらくて味気なく、選べるなら列車やバスでの移動に流れてしまいがち。
だがこの本が空旅のお供なら、ちょっといままでと気分が違うかも。
本書はブリティッシュ・エアウェイズの現役パイロットが業務の舞台裏や担当するボーイング747、そして空の世界の魅力を語るエッセイ集だ。
日本が「福岡空国」として認識されるように、地上の地図とは異なる空の領域のお話。世界を駆け巡るパイロット独特のプレイス・ラグ(いまどこにいるかわからなくなる状態)のお話。一瞬で飛び去る小さな国々、あるいは降機国の管制官たちとの顔も見ないままのコミュニケーションやすれ違う機体とのわずかなやりとりのお話。巨大な機体を飛ばすため連携するプロフェッショナルたちのお話。乱気流や雲をすり抜けながら、パイロットだけが目にすることができる魅惑の空の景色、地上の景色。
飛行機に乗り慣れているといっても、われわれ乗客が見て感じているのは座席からの風景。コックピットから見える風景、感じる空気というのはこんなに豊かなんだなあと引き込まれるように読んでしまった。B747型の機体や航空力学的なちょっと難しい話もわかりやすく描写されているので、飛行機に関する豆知識も蓄えられて、なんだか得した気分になれる。
ロマンチックで空旅への愛にあふれた上品なエッセイだ。詩的な表現が多いので文章への好き嫌いは出そうだが、ご長寿ラジオ番組「ジェットストリーム」ファンならきっと気に入るはず。願わくば大沢たかお(同番組の現ナレーター)に音読していただきたいわー……(うっとり)。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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