ITBアジア来場者数過去最高、出展国にも広がり

2018.12.10 14:34

ITBアジアのオープニングカット

ITBアジア2018が10月17~19日、シンガポールで開催された。アジアでの主要なBtoB商談会としての確固たる地位を築き上げた同商談会は、今年で11回目を迎えた。 ITBアジア2018の模様を報告する。

 シンガポールのメッセ・ベルリンが主催するITBアジア2018は、3日間にわたり、シンガポールのサンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催された。来場者数は前年比8.9%増の約1万2000人となり過去最高を記録した。商談については2万5000件がセットアップされた。11年目を迎えるトラベルトレードショーは、今年も盛会に終わった。

  総面積約1万7190m2の展示会場には、世界127カ国・1011団体に及ぶ出展企業・団体が集い、出展者数も前年実績(110カ国・940団体)を7.6%上回る過去最高を記録した。出展者の顔ぶれを見ると、例年どおりインドネシアやシンガポール、タイの出展企業・団体の多さが目立つ。だが、今回は東ヨーロッパからポーランドやスロベキアの企業・団体が初めて出展するなど、アジアだけでなくヨーロッパからの出展も増加したのが特徴だ。アブダビやボツワナ、クロアチア、モーリシャス、パプアニューギニアといった観光局も新たな出展団体として加わっ
た。ブースは8月中旬の時点ですでに完売したという。日本からは、今回新たに福岡観光コンベンションビューローと関西観光本部が参加しており、前年より3.1%増となる過去最多の33企業・団体が出展した。

 ITBアジアは、メッセ・ベルリンがITBベルリンで培った50年以上の歴史と運営ノウハウを生かして08年にアジア市場に展開した完全なBtoB商談会だ。17年には拡大する中国人旅行市場に特化したITBチャイナもスタートしている。ITBベルリンは1966年にスタートし、毎年3月に国際見本市「メッセ・ベルリン」を開催している。ITBアジアや ITBチャイナと違い、業界関係者だけでなく一般参加者も集めるトレードショーだ。メッセ・ベルリン・シンガポールのカトリーナ・リオン執行役員は、 「ITBブランドの一員であることは、相互販売やマー
ケティングなど多くの助けを得られる」と、そのブランドの利点を強調した。

進むパーソナライズ旅行

業界を代表するリーダーが集うカンファレンス

 ITBアジアの今回のテーマは、「トラベル・リイマジンド(Travel Reimagined)」で、新たに想像される旅行を意識。同時に開かれたカンファレンスには業界を代表するリーダーの講演が繰り広げられた。

 オープニングのパネルディスカッションでは、デジタルトラベラーをテーマに、技術革新がもたらす旅行の仕方やビジネスの変化について議論が行われた。マイクロソフトのシェーン・オフラハティ旅行・輸送担当グローバルディレクターは、AI(人工知能)やあらゆるモノがネットにつながるIoT、ブロックチェーンなどのテクノロジーの進化を受け、「今後10年の間に起こる変化は、過去250年で経験した変化を上回る」と語った。

 企業には、膨大なデータを分析し、オペレーションの最適化や次世代の意思決定を駆り立てる、より良い顧客体験の提供が求められる。グーグルのアジア太平洋地域(APAC)旅行担当ハーマイオニー・ジョイ産業局長は、企業だけでなく、顧客もデジタル化が進む点に注目。「顧客は、旅行業界に対してよりパーソナライズした体験の提供を求める」と語った。 

 続いてシートリップのビクター・ツェン最高コミュニケーションオフィサーが登壇し、18年国慶節休暇(10月1~7日)の中国人旅行者の傾向を明らかにした。休暇中の国内旅行を含む旅行者は前年比9.4%増の7億2600万人。アウトバウンドについては、女性が56%を占めた。世代別に見ると、1980年代生まれが36%と最大のシェアを誇り、90年代生まれが18%と続く。 

 シートリップによると、国慶節休暇中のアウトバウンドの人気旅行先は、トップがタイ。次いで日本、香港、ベトナム、シンガポールの順となった。事前調査では、日本が人気旅行先としてタイを抜き1位だったが、直前にタイが巻き返す結果となった。また、ローカル体験やユニークな旅行体験にお金を使う傾向は変わらず、人気のアクティビティは、スカイダイビングや気球、スキューバダイビング、ヘリコプター、料理教室、オフロードレースだったという。

注目集めるムスリム市場

 その他にも6つの主要なセッション(ナレッジ、MICE&コーポレート、MICE&テクノロジー、トラベル&テクノロジー、プレゼンテーション、ムスリムトラベル)が行われた。主催者の予想を超える盛況ぶりを見せたのは、ムスリムトラベル。 

 ムスリムセッションにおけるオープニングをかざったのは、中東・北アフリカにおける大手メタサーチであるWego(ウィゴー)の戦略プランニング担当のネッド・テルジェフ副社長の講演で、ムスリムのミレニアル世代の旅行動向を紹介した。「カップルで旅行をすることが多く、家族や友人との旅行や一人旅は少ない」。「SNSでは、スナップチャットの利用が増えている」などの傾向を示した。講演後も追加で質問を求める列ができ、聴講者の関心の高さがうかがえた。また、日本政府観光局(JNTO)シンガポール事務所も、ムスリム旅行者誘致に向けた講演を行った。

  東南アジアのマーケットリサーチ会社であるeコマースIQの調査によると、20年のムスリム旅行者数は16年比30%増の1億5600万人に達するという。また、ムスリム旅行者全体の観光支出は、26年に3000億ドルに上ると予測している。今後もムスリム市場は、世界のアウトバウンドにおける成長市場として注目を集め続けることは明らかである。ITBアジアでは、ムスリムトラベルを扱うインドネシアやマレーシアからの出展企業や団体もあり、ムスリム市場の重要性を再認識。これから先数年間は、ムスリム市場を意識したトレードショーを続ける意向で、来年もムスリムトラベルのセッションを設ける予定という。

来年も主要な地位を維持

多くのバイヤーで賑わう会場内

 メッセ・ベルリン・シンガポールのカトリーナ・リオン執行役員は、「ITBアジアは、今後もアジアにおける主要なトラベルトレードショーとしての地位を維持し続ける」とし、来年も今年を上回る商談会をつくりあげる旨、意欲を示した。今年出展した企業・団体のうち約半数が、すでに来年の同商談会への申し込みを済ませているという。出展の中心となるASEAN地域でだけでなく、中東や東ヨーロッパなどの企業・団体の出展も積極的に促す。ITBアジア2019は19年10月16~18日、同会場で開催される予定だ。

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