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躍進する沖縄、ハワイ超えで見えた新たな課題

2018年4月2日 8:00 AM

観光客数でハワイを超え盛り上がる沖縄の観光業界だが
(C)iStock.com/takenobu

沖縄県を訪れる観光客数が17年に初めてハワイを超えた。リゾートの代名詞的存在のハワイを上回ったことはひとつのマイルストーンになる。世界水準のリゾートを目指す沖縄がさらなる飛躍を遂げるために必要なこととは。

 沖縄県の17年の入域観光客数が939万6200人に達した。ハワイを訪れた旅行者数は938万2986人で、沖縄はこれを1万3000人余り上回った。沖縄が旅行者数でハワイを上回ったのはこれが初めてのことだ。16年はハワイの893万4277人に対して沖縄は861万3100人と約32万人下回っていたが、17年は沖縄が78万人以上増え前年比9.1%増と大幅に伸びたのに対し、ハワイは5.0%増にとどまった結果、沖縄にとって史上初の“ハワイ超え”と初の“900万人台”を同時に達成する快挙となった。

 沖縄の好調は5年以上継続している。12年10月以降、前年同月実績を上回り続けており、17年12月まで5年3カ月連続でプラスの好調ぶりで、17年の快挙につながった。最大の要因は訪日外国人客だ。17年は22.1%増の254万2200人となり、前年から46万100人増えた。国内客の32万3000人増を大きく上回るペースだ。

 訪日客の伸びを支えたのが国際航空路線の新規就航と増便、クルーズ寄港回数の増加だ。タイガーエア台湾(IT)の高雄線、韓国のティーウェイ航空(TW)の大邱線、中国東方航空(MU)の西安線、ピーチ・アビエーション(MM)のバンコク線、ジェットスター・アジア航空(3K)のシンガポール線など、那覇とアジア諸国を結ぶ新規路線の開設が相次ぎ、クルーズに関しても中国発クルーズ船の寄港回数が夏場を中心に増加し、空路・海路ともにぎわった。

 観光市場の継続的な好調を受けて、沖縄への観光投資も活発化。ホテルの新規開業や建設計画が目白押しだ。17年にはホテルアクアチッタナハ、JR九州ホテル・ブラッサム那覇、ユインチホテル南城・新館、那覇ウエスト・イン・アネックス、リンケンズホテルなど、国内ブランド系の開業が続き、18年以降はハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄(18年8月)、ダブルツリー・バイ・ヒルトン(18年夏)、ハレクラニ沖縄(19年)、ヒルトン沖縄瀬底リゾート(20年)などの外国系ブランドの開業が予定されている。このほか、星野リゾートやケン・コーポレーションも20年の開業を目指し、ホテル開発を進めている。

欧米市場の獲得に本腰

 順風満帆の沖縄だが、本当の意味でハワイを超えるには乗り越えなくてはならない課題もある。最大の課題は消費額の拡大だ。沖縄県の16年の観光収入6525億5400万円に対し、ハワイを訪れた旅行者による消費額は159億1120万ドル(約1兆6700億円)。ハワイは沖縄の2.5倍以上を観光で稼いでいる。この違いを生む大きな要因が滞在日数の違いだ。ハワイの平均滞在日数が8日以上なのに対し、沖縄は5日に満たない。平均滞在日数を延ばすことが、沖縄での消費額を増やす大きな力となる。

 しかし、国内客に多くは期待できない。働き方改革や休暇改革が叫ばれているものの、日本人の労働環境や休暇取得率が短期間で改善するのは難しい。また外国人客も、現在の市場構成を見ると、もともと短期の旅行を好むうえに距離的にも近い東アジアからの旅行者が多く、手軽に安く短期の海外旅行を楽しむ客が中心となっている。17年の外国人客254万2200人のうち、台湾・韓国・中国・香港からの旅行者数は207万1200人と全体の8割を占める。

 17年3月に県が第5次沖縄観光振興基本計画改定版で掲げた21年度までの目標値は、観光収入1兆1000億円、入域観光客数1200万人、平均滞在日数4.5日など。これらを達成するには、国内客や東アジアからの旅行者だけでなく、より長期滞在を好む欧米豪市場をこれまで以上に取り込む必要がある。県も同計画の中で少子高齢化や人口減少による国内市場の縮小への懸念について言及しており、「国内市場へのアプローチは継続しながら戦略的に海外市場を開拓し、沖縄観光の積極的な転換点となる10年としていく」とターゲットの転換を図る方向を打ち出している。

 これを受けて昨年9月に発表された沖縄観光推進ロードマップでは、「旅行市場が成熟し長期滞在が期待できる欧米等のリゾート需要と、1人当たり消費額の向上と観光収入増が期待できる海外の富裕層を明確にターゲットとして位置づけ、市場分析と受け入れ体制の整備を進めつつ、誘客に取り組んでいく」と欧米重視の姿勢を強めている。県では、「欧米豪に対するプロモーションを強化することと並行して、航空路線を確保することが重要であり、さまざまな取り組みを始めている」(観光政策課・前原正人課長)とのことで、具体的には3月15日に国際旅客ハブ構想を発表したところだ。

 同構想では、アジアだけでなくヨーロッパからの観光客を取り込む狙いがあり、沖縄の地理的特性を生かし、那覇空港を海外からの国際的な乗り継ぎ拠点とすることで、新たな周遊ルートの提案などを行う。全日空(NH)とルフトハンザ・ドイツ航空(LF)が連携することになっており、東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年度にはドイツ/沖縄線の就航を目指す。

【続きは週刊トラベルジャーナル18年4月2日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル18年4月2日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2018/04/02/2018%e5%b9%b44%e6%9c%882%e6%97%a5%e5%8f%b7%ef%bc%9e%e8%ba%8d%e9%80%b2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%b2%96%e7%b8%84%e3%80%80%e3%83%8f%e3%83%af%e3%82%a4%e8%b6%85%e3%81%88%e3%81%a7%e8%a6%8b%e3%81%88%e3%81%9f/